館長裏日誌 令和6年4月10日付け:最上義光歴史館

館長裏日誌 令和6年4月10日付け

■水のことわざのお話
 水に関係する言葉に「上善水の如し」というのがあります。老子にある言葉で「上善は水のごとし、水はよく万物を利して争わず、衆人の恵む所に処る。」 つまり「最高の善は水のようなもの。水は万物に利益をあたえながらも他と争わず、自らは低い位置におさまる」との意味です。
 これに孟子は「水は低きに流れ、人は易きに流れる。」と続けました。まあ、そのとおりなのですが、とあるホームページでは、さらにこれに続けて「人の体は約60%が水です。そのため、水に近い性質を持っていると思います。」とありました。話の展開が直角方向というか、うーむ。
 また、「水は方円の器に従う」ということわざがあります。白居易の詩句で、水は容器の形によって、どんな形にでも順応することをいっています。人も交友関係や環境によって善にも悪にも染まりやすいことのたとえで、「上善水の如し」の水とは全く違います。

■水とお酒の話
 「上善如水」という有名な日本酒がありますが、それはもう水のようにさらさらと入ってくる危険な酒です。そう言えば最近、日本酒を揃える店では、チェイサーつまり水を出してくれるところも多くなりました。日本酒のオン・ザ・ロックもありらしいのですが、水割りというのはさすがになしかと。昔、宴会などで熱燗にお湯を足して出しているなんていう話はよくききました。これは客にバレない程度に水増しするのがミソらしいです。
 ところで、山形には「十水(とみず)」という銘柄のとてもバランスのいいお酒があり、個人的におススメのひとつです。酒造元のホームページによると「江戸後期、水に恵まれて成長する主産地は良酒を求めて米を磨き、白米1石(こく・約180L)に対し1石の水加える『十水仕込み』(とみずしこみ)と称される製法を編み出しました。」とのことで、「香りは吟醸を思わせるような香りもあり、そして旨味がたっぷりある飲みごたえのあるふくよかな味わいが特徴。相性の良い料理は豚の角煮、魚の煮付け、牛肉のステーキなど。」との説明があり、「旨味があるのに飲みやすい非常に面白いお酒です。」と自ら面白がっているお酒でもあります。

■AI動画の話
 最近、AI拠点を日本国内に整備するという会社が次々と現れているようですが、AIと言えば先日、テキストから最長1分の動画を生成できる「Sora」が発表され話題になりました。現時点では、システムのさらなる改善と、誤情報や悪意のあるコンテンツの拡散を防ぐための「重要な安全措置」を講じる必要があるとして、一般公開を見送っているそうです。
 それにしても、これが自由に使えるようになれば、博物館としてもかなり画期的で、キャプションなどを補完する映像が作れたりできそうです。例えば各戦国武将のビジュアルなどが生成できれば面白いかと。あるいは手紙など古文書からの生成映像も面白いかと。当館であれば「北の関ケ原」と言われる「長谷堂合戦」の様子が描ければもう万々歳です。一方、豊臣秀次妻子の三条河原での処刑の場面とかは「重要な安全措置」が働いてしまうかもしれませんが。
 当館と運営団体が同じ「山寺芭蕉記念館」でも、かなり興味深い使い方が想定できます。ずばり芭蕉の句の動画生成です。例えば一番易しそうなのは「古池や蛙飛びこむ水の音」でしょうか。古池はどこかはわかっているそうで、背景情報には困らないのですが、映像的には検討すべきことが多々あります。視点は上下右左のどこからか、アップなのかロングなのか、一瞬なのか間をためるのか。また、蛙は一匹でもないとの指摘もあり、結果、様々な映像がでてきます。これが「閑さや岩にしみ入る蝉の声」となるとさらに難しくなります。「蝉」の種類はどうなのか。何より「閑さ」をどう表現するか。その生成音声はどうなのか、興味は尽きません。